研究概要 |
本補助金にて購入した高分解能電子顕微鏡に米国ローレンス・リバモア国立研究所より日米協力事業による共同実験に使用して広島大学工学部に送り還えされている20Kでの中性子照射した電子顕微鏡用金属試料を極低温にてクライオ・トランスファーして発生期の損傷欠陥を観察するための装置を結合する為の工作等を一部行った. この装置は次年度は完成出来て実験がスタート出来る予定である. 液体窒素温度でクライオ・トランスファーする実験は本年度で実施が可能になり一部の金属試料についての実験結果を得た. 即ち回転ターゲット中性子源(RTNSーII)を使用して極低温(<20K)にて核融合中性子照射した金属試料で日本国内に低温(78K)に保ったまま送り還されてきた試料を用いて,クライオ・トランファー電子顕微鏡観察を行った. その結果中性子照射損傷の基本単位である"変位カスケード損傷"の構造は低照射量では格子間原子は観察可能な大きさに集合しているが, 原子空孔は通常の回析コントラスト法では観察出来ないような小さい多数の集合体を形成している事が明らかになった. しかし中性子照射量の増加と共にカスケード・エネルギーのオーバーラップが起きて,観察出来ない様な微小集合体が格子緩和して観察可能な欠陥構造に変化する事も明らかになった. このようなクライオ・トランスファー電子顕微鏡観察では観察時の電子照射効果が欠陥構造の緩和に非常に影響を与えることも明らかにした. さらにこれらのカスケード損傷欠陥の熱的安定性を焼鈍実験により調べた. 特に本研究では微小点欠陥集合体のタイプをも正確に決定して行っているのが特徴で他に類をみない納得出来る結論に到達している. 高速増殖炉¨常陽"で高温照射したモリブデン及び鉄を用いて高温にて中性子照射中に形成する損傷欠陥発達過程を調べた. 格子間原子かた位ループが大きなサイズに成長し転位組織が形成する. ボイドの形成も観察された.
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