研究概要 |
本研究の目的は音声入力による言語翻訳システムを実現するための処理方式についての理論的検討,方式設計を中心とした基礎的研究を行うことである.62年度は,統合化処理を行うために,必要な高精度音声認識,言語解析法,概念処理機構の基本的処理方式への拡張について理論的考察を行い,個別的なモジュールを試作した. また,各モジュールでの部分的な処理結果を統合するための方式設計と試作を行なった. (1)音声処理部:62年度は,不特定話者の日本語単音節音声を入力として,その中の子音と母音とを自動的に認識するシステムを構築した.本システムは,単音節音声波形上で一定の時間間隔で音韻認識を行い,その音韻系列から子音と母音を抽出する.「対判別組合せ法」を用いることにより,分析位置を視察で指定した34種類の音韻を平均約90%で識別することが可能になった.音素のカテゴリとしては,子音と母音に加えて,凝似的に音素とみなせるような音声波形の一部分を含めている.単音節の自動的な認識では,子音について75%,母音について78%の認識率を得た.本システムの認識対象は単音節に限定しているが,音韻認識は音声波形上を時間的に連続して行なう方式であるため,連続音声認識への対応も想定している. (2)言語処理部:言語表現と対象世界との対応関係について,空間的状況に関する文前を対象に分析し,簡単な数理モデルの形で整理した.これに基づいて文章から対象世界記術(空間的状況)を再現するシステムの一部を試作した. (3)統合的情報処理機構.音韻・統語・意味・文脈情報を統合して,無矛盾性を維持しつつ,最も確からしい解釈を導ける統合パーサの設計と試作を行なった. このパーサは音声認識において誤認識が避けられないことを考慮したものである.
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