本研究のもっとも直接的な目的は、反応中間体としての超短寿命ラジカル対を、遊離ラジカルとは区別して測定する方法として、新しくCIDNP検出ESR法を開発し、その方法を用いて化学反応の機構を解明することにあった。しかしこの目的に加えて、(a)CIDNPをより定量的に扱う方法を確立すること、(b)CIDNPとCIDEPの両面からの解析を可能とすることの2つの目的があった。以上、3つの目的のいずれについても大きな成果が得られた。以下にその要点を記す。 1.CIDNPのenhancement factorの定量方法の確立 測定管の改良、90°パルスの工夫等多くの改良と工夫を重ねて、enhancement factorを定量的に求める方法を確立した。 2.過酸化ベンゾイルの光分解反応機構の解明および連続拡散モデルの検討。enhancement factorの温度依存性を定量し、連続拡散モデルの正しさを実験的に示した。 3.光分解反応の前駆体のスピン状態の決定、およびジベンジルケトンの光分解反応への応用 ケトンの開裂反応は一重項状態から起こるという、従来の定説をくつがえす重要な知見が得られた。 4.CIDNPの磁場依存性を調べる方法の開発 5.スピン相関CIDEP機構における新しい機構としての緩和モデルの提唱 6.CIDEP、CIDNP両方法で見たラジカル間交換相互作用 7.CIDNP検出ESRの開発 8.Lバンド時間分解ESR法を用いた低磁場CIDEP法の開発
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