研究概要 |
本研究は3つの段階に分けられる。第1は紫外ラマン分光装置の製作,第2はタンパク質,核酸の高次構造を反映する紫外ラマンマ-カ-バンドの表の充実,第3は,第1と第2の成果を踏まえて、遺伝情報の転写を調節する調節タンパク質の紫外共鳴ラマンスペクトルを測定,解析して,その調節機構の一端を構造化学的に理解することである。 1.紫外ラマン分光装置の製作:既存の可視ラマン分光装置を改良し,紫外光源としてNd:YAGレ-ザ-(第2,3,4,5高調波)とラマンシフタ-を併用し,マルチチャンネル紫外ラマン分光装置を作製した。 2.タンバク質・核酸構造マ-カ-バンド表の充実と応用:タンパク質主鎖のアミド結合,イミド結合(Pro),芳香族側鎖(Trp,Tyr,Phe,His),核塩法であるプリン,ピリミジン環の紫外ラマンバンドに関する基礎的な研究を行い,「ラマンマ-カ-バンド表」の充実を行った。また,ス-パ-オキシドジスムタ-ゼやバクテリオロドプシンの紫外共鳴ラマンスペクトルを初めて観測し,表に基づいて解析して有用な構造知見を得た。 3.調節タンバク質CRPとそのcAMP複合体の水溶液中の構造:調節タクパク質の1つであるcAMP受容タンパク質(CRP)は2量体として存在し,cAMP取り込みにより構造変化して特定の塩基配宣列に強く結合する。CRP同士が会合していない希薄溶液(〜50μM)について紫外鳴ラマンスペクトルを測定し解析したところ、一方のサブユニットの逆平行βバレルにcAMPが取り込まれると,そのサブユニットのみならず他方のβバレル構造も大きく変化することがわかった。また,取り込まれたcAMPはsyn型であり,アデニン環のN7位,C6NH_2位とタンパク質との水素結合により安定化されている。
|