研究概要 |
ReーOs法による硫化鉱物の年代決定法の開発が本研究の大きな柱である. その第一歩として, モリブデナイト(MoS_2)を選び, その年代決定を行った. モリブデナイトはReを比較的多く(数〜数百ppm)含んでいる. この鉱物中のOs同位体は, ^<187>Reの放射壊変により生じた^<187>Osのみであることを確認し, いくつかの試料についてRe及びOs濃度の定量により, 年代を決定することに成功した. 国内及び国外のモリブデナイト試料についてReーOs年代を求め, 他の方法から推定された年代と比較的近い値を得た. モリブデナイト以外の硫化鉱物へのReーOs法の適用を広げるため, 及びReーOs年代の確度・精度の言上を目的として, Os同位体比測定及びRe・Os濃度測定方法の改良をはかりつつある. Os同位体比測定の際の質量差別効果についての新しい補正方法の開発及び濃縮率の高い^<187>Osスパイクの使用とにより, Os同位体比と濃度の同時測定が可能となった. これは本年度の大きな成果である. この結果, 揮発性が高く化学処理の際に損失が生じ易いOsについても, 正確なご度測定が出来るようになった. また, Os同位体比測定の精度も向上した. 従来は不可能とされてきた, SmーNd法などによる硫化鉱物の年代決定についても, その可能性について検討を始めた. もし, これらの方法が適用できれば, 同一試料についてのSmーNd法等とReーOs法の併用により, まだ問題の残っている^<187>Reの壊変定数について, 信頼性の高い値を求める事が可能となる. 安定同位体を用いた硫化鉱物の成因の研究については, 経元素用質量分析計が設置された. 硫黄, 水素, 酸素, 炭素などの標準ガスにより機器の調整を行い, 良好な予備結果を得た. 現在, 試料からの硫黄などの描出・精製ラインの設計・製作を行っている. このラインの完成後に, 硫黄同位体比測定を始める計画が着実に進行しつつある.
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