ReーOs法による硫化鉱物の年代測定の第一歩として、モリブデナイト(MoS_2)についてのReーOs法の開発を前年度までに行った。今年度は、試料の分解法およびOsの蒸留法を更に改良し、より正確なReーOs年代を求めることに成功した。特に、同位体希釈法によりOsを定量する際に、同位体平衡に達していることを十分に確認することが重要であることを明らかにした。 Os定量の際のモリブデナイトの分解には、(1)アルカリ溶融、(2)テフロン密閉容器による酸分解、(3)ガラスアンプルを用いた酸分解、の3つの方法を試みた。その結果、ガラスアンプルを用いた酸分解が最も適切な分解方法であることが判明した。Osの蒸留法としては、Osを回収するトラップを1時間毎に交換し、5時間蒸留する方法が良好な結果を与えることが分った。これらの方法を用いることにより、Osについての同位体平衡の問題を解決できた。 さらに、モリブデナイト中のReの濃度分布が不均一であることを明らかにし、ReーOs年代を求める場合に、この点も留意する必要のあることを示した。 上記の方法を用いて、東山鉱床(島根県)のモリブデナイトのReーOs年代を測定した。得られたReーOs年代(37.5±3.8)Maは、母岩についてのKーAr年代(46.6±1.9)Maよりも約20%若い。この結果から、(1)東山鉱床の形成の時期が、それに関連した火成活動の末期である、又は、(2)鉱床形成後の変成作用でOsが散逸した、等の可能性が考えられる。 本研究により、硫化鉱物のReーOs年代測定方法の基本的問題が解決された。そして、硫化鉱物のReーOs年代にもとづく鉱床成因論が可能となった。
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