研究概要 |
N-(R)-α-メチルベンジルサリチルアルジミンの1:2型亜鉛(11)錯体の立体選択性を、単結晶のXー線結晶解析および円二色性スペクトルの温度依存性より研究した。結晶は斜方晶系、空間群P2_12_12_1で、単位格子中に構造の異なる二つの錯体分子を含む。それぞれの錯体分子の金属周り配置は四面体で擬C_2軸に関して二つのシッフ塩基配位子が左巻き(すなわちΛ配置)に結合していることが示された。この四面体錯体における立体選択性の要因を明らかにする目的で、分子構造を詳細に検討した結果、キラルなNー置換基のメチルおよびフェニルの炭素原子が、隣接するキレ-ト環の炭素および酸素原子とVan der Waal's半径(C--03.6;C--C4.0Å)よりも著しく接近した距離にあることを確認した。このことにより、分子内に配位子間共有相互作用が働いて、ジアステレオマ-の一方を選択的に生成していることが証明された。 この光学活性錯体はアゾメチンのπ-π^*バンドに“exciton"にもとずくCD couplet(低波数側から(-,+)符号)を示す。π-π^*のCD coupletのパタ-ンを銅(11)およびニッケル(11)錯体(擬四面体配置をもつ)のものと比較検討した結果、金属周りがΛ配置のときは常に(-,+)、Δ配置のときは(+,-)が成立し、このCDパタ-ンが金属周りの絶対構造の診断に使えることが判明した。他方、(R)ー1,2ープロパンジアミンとサリチルアルデヒドとのシッフ塩基(四座配位子)の銅(11)、ニッケル(11)、亜鉛(11)錯体の絶対構造とCDパタ-ンとの関係は、上とは全く逆になることもこの研究で明かとなった。
|