研究概要 |
本研究は固溶体を形成する物質中の固溶元素の分布を, 單位胞内の平均値としてではなく複数の單位胞にまたがる結晶内の比較的広い領域内での分布状態として求めることを目的としている. そのためには従来行われているブラッグ反射ではなく微弱な散漫散乱・衛星反射の測定を行う必要があり, 本年度は測定のための装置の購入,開発,改良に重点を置き以下に列挙する事柄を行った. 先ず研究方法に関しては, (1)強力X線発生装置(最高出力12kw)の導入:これにより微弱な散漫散乱の測定(下記の(5)及び(6))が可能になった. (2)單結晶モノクロメータを用いた分光架台の開発:特に散漫散乱・衛星反射を写真法により精度良く測定できるようになった. (3)四軸型回折計の改良:散漫散乱等の測定に適した仕様に改良を行った. (4)四軸型回折計の制御用ソフトウェアの開発:空間的に拡がりを持つ散漫散乱を測定するための制御・測定用のソフトウェアの開発を行った. 各種物質についての研究では, (5)NaーCl系固溶体の研究:相分離に伴い散漫散乱が発生することを見出する共に, その定性的な解析を行った. (6)γーMnOOHからγーMnO_2を生成する相変化の研究:相変化に伴うMMn原子の分布の変化を明らかにした. 7)αーAlOOHからαーAl_2O_3を生成する相変化の研究:相変化の初期に出現する衛星反射と散漫散乱の精密な測定を行い, Al原子の分布の変化の解析を行った. (8)酸化物高温超電導体の研究:BaーY系酸化物の構造の研究により, CuとOの分布を明らかにした. 次年度以降では上記の成果を元に, (1)測定装置・ソフトウェアの整備・拡充, (2)より広範囲な物質についての研究, を行うことにより新しい知見を得ることを目的とする.
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