研究概要 |
初年度の研究実施計画は,(1)走査電子顕微鏡の設置・調整と,(2)次年度以降のX線マイクロプローブによる詳細な研究のための野外及び室内における試料準備であった. 電子顕微鏡は日立製Sー650を購入し,予定通り納入設置された. 現在種々調整も終り, 岩石鉱物の電顕レベルの微細構造が, 容易に観察できるようになっている. (2)では, (a)肥後変成岩とミグマタイト,(b)幌満カンラン岩体,(c)玄武岩中のカンラン岩ゼノリス,(d)韓国及び中国の花こう岩類,(e)阿蘇火山岩類の岩関学的研究,のそれぞれの分野で研究を進展させた. 以下では(a)と(b)について述べる: (a).肥後変成帯に産するミグマタイトについて, 野外において詳細な調査,サンプリングを行い岩石記載を行った. ミグマタイトの代表的なサンプル30ヶについて, X線マイクロプローブと螢光X線分析により, 主成分元素,中性子放射化分析により微量成分元素の, 岩化学分析を行い, 予備的な鉱物分析も加えて, 肥後ミグマタイトの一応のキャラクタリゼーションは完了した. 又, 角閃石の微細構造等電子顕微鏡で観察し, より詳細な鉱物分析の方針を立てることができる. (b)では, 幌満カンラン岩の層状構造のデータをもとに,Obata and Nagahara(1987)で提示したマントルでのマグマの浸透流の考察をさらに進展させ, 現在, モデルの数値実験を行いつつある. 又, 米国グループとの共同研究により, 幌満の代表的なカンラン岩サンプルについて, 全岩及び鉱物の希土類元素のデータが得られ, マグマの発生・移動における, より詳細な地球化学的モデル化が行えるようになってきた. 微細組織については, ザグロ石の分解反応により生成した鉱物集合体を電子顕微鏡で観察し写真を撮り, より詳細な分析的研究の準備が整った.
|