研究概要 |
本年度は新規なかさ高い三脚型配位子 ドロトリス(3,5ージイソプロピルー1ーピラゾリル)ボレイトを配位子として用い、種々の酵素類似銅および鉄錯体の合成・単離に成功した。この配位子を用い銅(II)錯体として前例のない4面体型の配位子場を持つハロ銅錯体が容易に得られることを見い出し、これを出発原料として銅(II)ーチオレート、アルキルパーオキソ、アシルパーオキソ錯体の合成に初めて成功した。これらの錯体の特異な分光学的性質および反応性は、ブルー銅たんぱく質或いはドーパミンβー水酸化酵素、フェニルアラニン水酸化酵素の特性を良く再現することから、その反応性の今後の検討はこれらの酵素の構造と機能を探る上で重要な知見となることが期待される。また鉄錯体においても2価或いは3価のカルボキシレート、フェノキシ錯体の合成に成功した。これらは非ヘム鉄モノオキシゲナーゼの中間体モデルと見なすことができる。本研究費によって設置した4軸X線回折装置を用いこれらの錯体の分子構造を決定した。また前年度に合成に成功したμーパーオキソ2核銅錯体の酸化能について詳しい検討を行ないこの錯体がオレフィンのアリル位或いはフェノール、カテコールから容易に水素を引き抜きラジカル的な酸化反応を開始するものの、酸素添加能を示さないことを明らかにした。チロシナーゼの反応機能に関連し重要な知見である。またメタンモノオキシゲナーゼのモデル反応としてμーオキソ2核鉄錯体によるアルカンの水酸化反応の開発に成功し、オキソの外にヘキサフルオロアセチルアセトネートで架橋した2核鉄錯体が触媒として特に有効であることを明らかにした。
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