研究概要 |
食品素材の空隙構造には,整数数次元とは異なる実数次元の世界(フラクタル)が存在する可能性がある. もしそうならば,食品素材の吸着平衝や,移動現象とカップルした物理・化学・生化学的諸変化の速度過程の解析には,新たな視座が用意されねばならない. 本年度は,まず,いくつかの食品素材について,空隙構造がフラクタルであるか否かの検討を行った. 1.澱粉系素材(米粉,小麦粉)と各社粉乳につき,分級した粒径区分とN_2吸着等温線より求めた比表面積とをlogーlogプロットすると,ある範囲で直線関係があった. すなわち,これら食品素材中の空隙は,ある範囲内でフラクタルであり,直線の勾配から,フラクタル次元は2.3〜2.5であった. N_2の代りにKrを用いて測定しても,比表面積の値は小となるが,同じ次元のフラクタル構造が示された. 因みに,活性炭はほぼ3次元のフラクタルであることが明らかになっている. 2.構造の発達様式は密度にも反映されるであろう. Heを用いてバレイショ澱粉粒と各社粉乳の密度一粒径相関を求めると,前者で約2.6次元のフラクタルが観測されたが,後者は粒径と無関係な一定値が得られた. 澱粉粒密度の粒径依存性は,澱粉の構造モデルを考える上で興味深い. 3.Extrusion-cookingを行った時の米粉の構造変化については,原料の空隙率との対応を検討したが,フラクタル解析は今後の課題に残された. 4.顯微鏡写眞による構造解析については(1)粗視化の度合を変える方法,(2)画素の大きさを変えて測度の関係を検討,の両者につき検討し,ミンコフスキー曲線やDLA(Diffusion-limited Aggregation)モデルについては文献値にほぼ等しいフラクタル次元が求められるに至ったが,食品素材への適用は今後の課題である. 5.食物繊維については次年度に検討.
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