研究概要 |
我々はFプラスミドの分配機構に必須なSopA蛋白とSopB蛋白を精製し, DNA断片との結合能についてゲルシフト法およびフットプリント法により解析した. 高濃度のSopA蛋白はsopオペロンのオペレーター・プロモーター領域に結合する性質があり, さらにSopB蛋白の共在下ではSopA蛋白の濃度が低くてもこのDNAー蛋白複合体が形成された. オペレーター・プロモーター領域に存在する4つの反復配列を含む領域がこれらの蛋白によってDNaselに耐性となった. 一方, in vivoの実験から, sopオペロンの発現は両蛋白によって調節されていることが明らかになった. ミニFプラスミドを安定に保持できなくなった宿主変異株を多数分離し解析を行って, このプラスミドの分配機構に関与する宿主遺伝子を5つの連関群に分類した. このうち染色体上83分に位置しているhopA18およびhopA383変異はDNAジャイレースのサブユニットの1つであるgyrB遺伝子に起った変異であることが分かった. さらに塩基配列を調べたところ, hopA18変異は第508番目のThrがMetに変化していることが, またhopA383は第268番目のCysがTyrに変化していることが明らかになった. hopA変異株ではpBR322DNAのrelaxationが起っていることが観察された. これらのhopA変異はミニFプラスミドの複製にはあまり大きな影響を与えないが, 分配機構には大きな影響がみられる変異であると考えられる. 染色体上60.5分に位置する3つのhop変異株(hopE)は, 野性型のrecD遺伝子により相補されることが分かり, また塩基配列の解析結果からもエキソヌクレアーゼVのサブユニットをコードするrecD遺伝子の変異であることが確認された. これらhopE変異体では多量のプラスミドDNAの線状多量体が形成されており, これらの分子による不和合性によりミニFプラスミドが不安定になっていると考えられる.
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