研究概要 |
大腸菌には染色体DNAの複製後に娘染色体をそれぞれ細胞長の1/4、3/4の位置に移動させる分配機構が存在することを明かにした。この移動には複製終結後の新たな蛋白合成を必要とするが、DNAジャイレ-ス活性やDNA複製開始反応を必要としない。この分配機構に働く新しい遺伝子mukBを発見した。この遺伝子によってコ-ドされるMukB蛋白は、細菌では今までに報告のない駆動力発生酵素であることが示唆された。また、膜蛋白をコ-ドするmukA(tolC)遺伝子もこの分配機構に関与していることを明かにした。さらに大腸菌の染色体分配に関与する新しいトポイソメラ-ゼtopIVの遺伝子parEを発見した。 大腸菌の性決定因子に由来するミニFプラスミドの安定保持機構を解析し、複製機構の他に分配機構(sopA,B,C遺伝子によって支配される)、および宿主細胞致死機構(ccdA,B遺伝子によって支配される)が存在することを明かにした。一方、ミニFプラスミドの安定保持に関与する宿主染色体遺伝子として、hopA(gryB),hopD(hupB),hopE(recD),dnaK,ugpAを同定した。 大腸菌の細胞分裂と形態形成に関与する遺伝子を解析し、pbpA,rodA遺伝子は細胞の桿状形態形成のみならず、細胞分裂にも重要な役割を果たすことを明かにした。また隔壁形成酵素ペニシリン結合蛋白3の細胞質膜への移行にFtsH蛋白が必須であることを明かにした。隔壁の位置決定に働くmin遺伝子についても解析した。 ヒトの高脂血症に関係したヒト・アポリポ蛋白apoCーIII変異の遺伝子を単離しその塩基配列より、Thr74がAla74に置換していることを明かにした。またapoE5変異ではGlu3がLys3に、apoE7変異ではGlu244,245がLys244,245に置換していることを単離した遺伝子の塩基配列から証明した。
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