研究概要 |
本年度は発現ベクターに組み込む植物遺伝子の構造解析を中心に研究を進めほぼ初期に目的を達成した. イネの育種は各分野で幅広く行われているが, 葉緑体の遺伝子について最も遅れていると思われるのでそれ中心に研究した. すでに制限酵素断片の物理地図が決定されている栽培種「日本晴」を用い, 光合成遺伝子の内発現量が大きく異なる, RuBisCO大サブユニット(LS), ATP合成酵素βサブユニット(β),光化学系IIの32KDタンパク質(32KD)の塩基配列を決定した. 遺伝子発現に大切なpromoter領域を他の植物と比べてみると, 双子葉植物であるタバコとは非常に異なっていたが, 同じイネ科植物であるトウモロコシ, 大麦, 小麦の間ではよく保存されていた. しかし詳細にみると, 発現量の少ないβでは4種の植物で完全に同じであったが, 発現量の多いLSではある程度異なっていた. 特にC_4植物であるトウモロコシで, "-35"のすぐ上流でC_3植物に比べ5塩基の欠損が発見されたことは興味のあることである. 32KDについてはこのpromoterが強力で, 大腸菌中でも強力に発現するらしく, dideoxy法で塩基配列を決定することが因難であった. 塩基配列は決定されたが, 他のイネ科植物の配列が発表されていないので, 現在タバコのそれと比較している. B, C, E,などのゲノムを持つ野生イネは遺伝資源として大切であるので, それらの葉緑体DNAを抽出した. 制限酵素BamHIで切断し, アガロース電気泳動で分析したところ, 栽培種を入れた4種でパターンはすべて異なっていた. これは葉緑体DNAレベルで変異が激しいことを示しており, これらのpromoterを解析するため, クローニングする準備を進めている. 葉緑体の転写終結点が大腸菌で働くかを調べるため, L半のterminatorをその活性を調べるベクターであるpλSΔに挿昌したところ,大腸菌中で転写終結点として働くことが示された.
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