研究概要 |
植物細胞の細胞質ゲノム、すなわち葉緑体とミトコンドリアDNAにcodeされている遺伝子は通常母性遺伝を行い、交雑育種で改良することは困難である。このため遺伝子工学を育種に効率的に適用するため、栽培イネと野生イネの細胞質ゲノムの構造と遺伝子の配置を調べるとともに人為的に操作した遺伝子を発現ベクタ-につなぎバクテリア内で発現させ、その機能効率と遺伝子の構造の関係および生産物の特性を調べる予備実験を行った。 1.すでにイネの栽培種「日本晴」を用い葉緑体DNAの物理地図を決定し、クロ-ンバンクを作製していたのでこれを用いた。光合成に重要な遺伝子の内、RuBisCO大サブユニット、ATP合成酵素β・εサブユニット、光化学系IIの32KDタンパク質の塩基配列を決定した。 2.遺伝子実験施設との共同研究により、イネ葉緑体DNAの全塩基配列(134,525塩基)が決定できた。これによるとイネのサイズはタバコより20kb小さいにもかかわらず、タバコで見つけられたすべての遺伝子が存在することが確認された。しかし両者の間には大きな逆位が存在し、また逆位反復配列(IR)にある遺伝子が異なるなど葉緑体DNA自身がある程度変化を繰り返していることが明らかになった。 3.イネ属のB,C,Eなどのゲノムを持つ植物は遺伝資源として大切であるので、それらの葉緑体DNAを抽出した。これを用いてλファ-ジへの葉緑体DNA断片のクロ-ニングを行った。それにより物理地図の決定とクロ-ンバンクの作製を行った。 4.葉緑体の転写終結点が大腸菌で働くかを調べるため、LSのterminatorをその活性を調べるベクタ-であるPλS△に挿入したところ、大腸菌中で転写終結点として働くことが示された。
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