研究概要 |
1.3系およびそれらから作出されたF_1より成るセットを6セット用いて, 葉面積の展開速度(LA), 葉面積当り光合成速度(APS)を比較し, F_1水稲の高収性を光合成面から明らかにしようとした. その結果, 強いヘテロシスを示すのはLAであり, APSはヘテロシスを示さなかった. しかしF_1のAPSは老化の速度が遅く, 登熟期においても比較的高い値を示していた. こうしたことが, 収量にみられるヘテロシスの光合成面での原因となっていると考えられた. 2.インディカ, ジャポニカのF_1品種の収量を各々通常のインディカ, ジャポニカ品種と比較することによってF_1品種の高収性が何に起因するかを調べた. 収量はインディカ, ジャポニカともにF_1品種が通常品種より有意に高いことが示され, その原因としては, 干粒重が高いことに原因して挙げられた. F_1品種は1穂粒数も極めて高くなっていたが, それとひきかえに稔実歩合が小さくなっており, この点からソース能力をさらに増加させれば増収の可能性が考えられた. 3.日印交雑品種, 水原258号の高収性の解明のために日本晴, 水原258号の光合成・呼吸面での特徴を調べた. 光合成には両品種の間で有意な差が認められなかったが, 呼吸では水原が日本晴を常に上回っていた. このことが水原の高い収量性とどう関連しているかは今後の研究課題である. 4.窒素による成長速度の調節がどのような代謝過程に起因するのか明らかにするため, C/Nバランスに着目し調査した. 炭水化物, アミノ酸含量およびその日変化の大きさは, 植物体の部位, 培地, 窒素濃度により大きく異なった. 炭水化物含量の日変化の大きさは成長速度と関連しており, 炭水化物の利用過程に着目することにより, 制御過程を明らかにすることが可能と考えられた.
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