開花2日目のイネ胚は約60以上の細胞により構成されており、細胞切片で1個の細胞により珠心と接している。この細胞は将来、胚柄細胞になるものであり、核や澱粉粒をもった小型のプラスチ心などが観察される。開花2日目の胚の基部には、細胞壁が形成されており、中央細胞のポケット部分とのあいだに多くの原形質連絡が見られる。胚の上部の細胞では、中央細胞膜とのあいだに、電子密度の低い物質が充填されているが、この物質の組成は不明である。近く、明瞭な細胞壁がこの部分に形成されると思われる。この時期にはまだ、中央細胞のポケット部分に退化組織が見られ、また珠心の細胞間隙には、花粉管跡が明らかに認められた。開花3日目のイネ胚は、すでに200近い細胞によって掲成されており、糊粉層細胞の分化が胚の付近から始まっている。また珠心細胞は珠心表皮を残して退化し始めている。開花2日目では多核体であった胚乳細胞は、開花3日目で多数の細胞を細胞壁形成により分化し、大きな液胞と核および小型の澱粉を含む細胞値をもつようになる。開花4日目のイネ胚では、胚の上部では子葉鞘の分化が見られ、すでに将来茎頂となる部分が特定できる。胚盤系組織細胞に多くの液胞が見られるが、茎頂付近の細胞には液胞がすくない。また胚柄細胞も分化している。開花3日目では見られなかった表皮細胞が、4日目には明らかに分化しており、とくに胞盤上皮細胞の分化は明瞭である。すでに表皮細胞のクチクラ層は形成されているが、胚盤上皮細胞では一度形成されたクチクラ層の消失が始まっている。以上の如き種子形成の初期過程である受精胚の発生と、無菌培養条件下での体細胞胚発生が比較された。両者の正確な比較は、分ゲツ芽の発生との比較もおこないながら、将来充分に検討しなければならない。未利用資源植物に関しては、マルバ・コルコ-ラスをはじめ約30種近くの収集をおこなった。
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