酢酸菌の生化学的研究

1987 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62440014
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 飴山 実 山口大学, 農学部, 教授 (90022053)
• 研究分担者: 滝本 晃一 山口大学, RI総合実験室, 助教授 (00115875) ; 中島 弘二 聖路加看護大学, 教授 (80034940) ; 品川 恵美子 山口大学, 農学部, 助手 (20116726) ; 松下 一信 山口大学, 農学部, 助手 (50107736) ; 足立 収生 山口大学, 農学部, 助教授 (20027189)
• キーワード: 酢酸菌 / PQQ / チトクロムO / 酢酸発酵 / グルコース脱水素酵素 / アルコール脱水素酵素

研究概要

1.酢酸菌の糖質酸化系呼吸鎖に関して:酢酸発酵やグルコン酸発酵に関与する糖質酸化系呼吸鎖の特性についてGluconobacter属を用いて検討した.
(1)この酸化系はシアン耐性とシアン感受性の二つに分枝した呼吸鎖より成っており,耐性経路はチトクロムCが,感受性経路にはチトクロムOが関与している. (2)シアン耐性経路は酸化発酵にともなう培養pHの低下によって増加し,エネルギー生成能が減少する. (3)シアン感受性経路のチトクロムOが可溶化精製され,また人工膜小胞に再構成された. この酵素はシアンに感受性でユビキノールと反応し,かつエネルギー生成能を有する. (4)シアン耐性経路に関与する成分の精製およびAcetobacter属菌による同様な検討が現在すすめられている.
2.酢酸菌に含まれるPQQ酵素の機能に関して:酢酸発酵やグルコン酸発酵に関与するPQQ酵素であるアルコール脱水素酵素(ADH)とグルコース脱水素酵素(GDH)の電子伝達機能について人工膜小胞への再構成実験をもとに検討した. (1)GDHは界面活性剤を含む水溶系でユビキノンアナログと反応する. (2)ADHもGDHもユビキノンとチトクロムOを含む人工膜小胞上でそれぞれアルコールおよびグルコース酸化活性を発現する. (3)GDHからの電子は人工膜小胞上でユビキノンを経てADHそしてフェリシアニドに伝達されることができる.
3.PQQによる酢酸菌の生育と酢酸発酵の促進に関して:(1)酢酸発酵に関与するAcetobacter属菌はPQQの添加によって誘導期が短縮され生育が促進される. (2)Acetobacter属菌へのPQQ添加はPQQ酵素であるADHやアルデヒド脱水素酵素の生成を促進することによって酢酸発酵を促進する.

研究成果

• [文献書誌] Kazunobu Matsushita: Journal of Bacteriology. 169. 205-209 (1987)
• [文献書誌] 飴山 實: 化学と生物. 25. 164-172 (1987)
• [文献書誌] 飴山 實: 化学工業. 38. 418-423 (1987)
• [文献書誌] 飴山 實: 発酵と工業. 45. 458-467 (1987)
• [文献書誌] 飴山 實: 醸造協会誌. 82. 587-591 (1987)
• [文献書誌] 飴山 實: 醸造協会誌. 82. 460-466 (1987)
• [文献書誌] 野村 幸弘: 日本農芸化学会誌. 61. 1079-1085 (1987)
• [文献書誌] Minoru Ameyama: Agricultural and Biologican Chemistry. 51. 2943-2950 (1987)
• [文献書誌] Kazunobu Matsushita: Biochimica et Biophysica Acta. 894. 304-312 (1987)
• [文献書誌] Minoru Ameyama: BioFactors. 1. 51-53 (1988)
• [文献書誌] 野村 幸弘: 日本農芸化学会誌. 62. 143-148 (1988)
• [文献書誌] 飴山 實: 微生物. 4. (1988)
• [文献書誌] 日本ビタミン学会編 飴山實: "ビタミンハンドブックーピロロキノリンキノン(PQQ)" 化学同人, (1988)
• [文献書誌] J. BeMiller ed. Minoru Ameyama: "Methods in Carbohydrate Chemistry" Academic Press, (1988)