1.ホヤ胚単離割球における初経型分化の解析 昭和62年度の研究により、ホヤ8細胞胚より単離した動物半球頭側割球a4ー2は、植物半球頭側割球A4ー1と接着して2細胞系として培養する。細胞間誘導により、神経型分化を示すことがわかっている。一方、単離したa4ー2割球を初期の8細胞期から110細胞期の間でプロネースにより10℃15分間処理すると同型な神経型分化を示すことがわかった。このプロネース処理による神経型分化と接着にする神経誘導が同一の現象であるかどうかを確かめるために、神経誘導に有効な接着時点を解析した。この有効時点は32細胞期よりの嚢胚中期までにあり、とくにa4ー2割球の接着による分化能の低下はプロネース処理による分化能の低下と同一時期に起こることがわかった。一方、植物半球頭側割球A4ー1の誘導能はこの時期には低下せず神経胚期まで続いていることがわかった。この結果、プロネースによる神経分化は細胞間接着による神経誘導をよく模倣していることがわかった。また、プロネースは細菌が産出する複合酵素であるので、神経型分化に有効な成分をクロマトグラム・特異的酵素抑制剤等をもちいて調べたところ、少なくともサブテイリシン型のセリンプロテアーゼが有効であることがわかった。また純粋なトリプシンは2%でも無効であった。今後は、接着による神経型分化に際しても蛋白分解酵素活性が、何らかの役割をもつか否かを調べる必要がある。 2.マウス奇形腫細胞による神経型分化の解析 62年度の成果により、奇形腫細胞のレチナール酸による神経分化誘導時には、不活性化の速いT型Caチャネルが分化の初期に出現することがわかった。今年度、未分化の幹細胞について調べたところ、Naチャネル・Caチャネルとも出現せず、不活性化の傾向を示すKチャネルのみが認められ、分化したものとは明らかに区別される膜興奮性を示すことがわかった。
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