研究概要 |
前頭連合野の機能と病態に関し, サルを用いた実験的研究と, ヒトの頭皮上から記録される事象関連電位について研究を進めた. 1.ニホンザルの前頭連合野の主溝, 弓状溝の奥も含めた各領野, 運動前野, 運動野などのそれぞれ皮質表面と深部に記録用電極を慢性的に埋め込み, 色光弁別を伴う視覚始動性反応時間運動を手で行わせ, 次の知見を得た. 報酬を伴う色光刺激(運動遂行可)と報酬を伴わない別の色光刺激(運動遂行不可)を不規則な順序で呈示すると, 最初サルは両方の刺激に応じて手でレバー挙げ運動を行うが, やがて運動遂行不可の刺激では運動しなくなる. この際, 運動をしなくなるのに一致して, 主溝背側壁の皮質と前頭前野腹外側部の皮質に特有なフィールド電位(運動不可電位)が出現してくる. この電位は, 光刺激(500ミリ秒持続)の開始から110ー150ミリ秒の潜時で始り50ー100ミリ秒の巾を持つ皮質表面陰性, 深部陽性波である. 色光を逆転させても, 色とは関係なく運動を遂行しない時に限って出現するので, 運動を行わないための判断および運動の抑圧に関連した前頭連合野の活動を示すものと解釈される. このような電位が, 両側前頭連合野の上記の限局した部位に記録されることを5頭のサルで確認した. 2.弁別のための2色の予告刺激(50ミリ秒持続)を与えて約1秒後に命令刺激として別な色光刺激(500ミリ秒刺激)与える依存的弁別運動を課して, サルの前頭連合野のフィールド電位を記録分析した. 予告刺激が運動遂行可の場合, 命令刺激までの間に持続的な皮質表面陰性, 深部陽性電位が出現することを見出した. 運動遂行不可の場合はこのような電位は出現せず時に表面陽性, 深部陰性電位のみられることもあった. 3.ヒトについても, サルの場合と同様の刺激による事象関連電位を記録分析した.
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