研究概要 |
発熱は体内で新生されたInterleukin-l (IL-l)がプロスタグランディン(PG)を介して体温調節神経機構に仂くことによって発現すると理解されてきた. このように発熱をおこすサイトカインはILーlだけでなく他にも発熱因子として作用することが予想される. またこれら発熱諸因子は体温上昇のみならず,色々な標的臓器や標的組織に仂いて,色々な生物活性を発現し,総合的にみると生体防御的に仂いている. また同時に免疫系に対しても増幅作用を呈している. そこでこれら各種発熱因子の産生部位やそれらの生体防御反応発現様式を明らかにすることによって,生体防御の全体像把握すると同時にその生物学的意義を究明せんとした. それには異なる3つの方法を用いて多角的に解析を加えている. 1.Histo-in situ hibridization [HISH]法を用いる実験,まずヒトILーlαならびにILーlβ,家兎ILーlβのcDNAを供与して貰い,今後hibridizationに使用するに充分な量を得るために,ベクターに導入,細菌に入れ増殖・分離・精製を行って次年度からの使用に備えている. 2.内分泌系のうち下垂体・副腎系は発熱時に著しく活性化されることが執告されているが,その状況を確認した後,その発現機序究明につとめた. その結果発熱時に発熱反応の最終メディエーターとして作用しているPGが,同時に脳内でCRFの増量に仂いていることが明らかになり,すくなくとも発熱発現と共役してACTHの増量がみられることが分かった. 3.他方発熱反応に伴って出現する生体防御反応の一つに急性相反応(APR)があるが,これまでこのAPRは血中のILーlが直接に標的臓器に仂いて出現しているものと理解されていたが,ILーlを脳内に微量投与すると著明なAPRが出現したことから,この反応の発現調節には神経系の関与が一部存在するものと推察される.
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