研究概要 |
発熱反応と生体防御についての全体像を明確にすべく,これまで4年間にわたって3つの側面からアプロ-チを加えてきたが,同時に平行して進展しているわけでなく無麻酔発熱実験による研究が突出してきている。 1.無麻酔発熱実験(1)無拘束動物による実験:これまで発熱についての各種実験は,充分に固定に順応させた家兎もしくはラットを使用して検討している。しかしより自然に発現する発熱を検するためにtelemetoric systemを使い無拘束ラットについて観察し,次のことが明らかとなった。(1)ラットの体温は安静時37.1℃前後にある。(2)1相性発熱を呈した0.5μg/kgのILー1β投与で,無拘束時には2相性発熱が出現する。(3)10μg/kgのLPS投与では体温の下降が出現するが,無拘束時には1.5℃にも及ぶ発熱がみられた。これらのことからラットは充分に環境に順応させたとしても,ストレス下にあることは明白であり,ラットが容易に発熱しなかったことは、なおストレス下にあることが一因と解される。またストレスを加えることにより体温の上昇がおこり,これにはプロスタグランジン(PG)が関与し,また血中ACTH濃度も増加する。(2)ACTH活性化実験:血中のノルアドレナリン濃度の上昇があると,ACTH濃度が上昇しこの時血中のPG濃度が増加する。また血中CRFの増量も関与する。 2.電気生理学的研究、視床下部の視束前野に微量のILー1βを投与すると,急性相反応が発現する。そこでこの部の電気刺激により同様な反応が発現するか否かを検したが,白血球数,血漿Fe・Zn濃度の変動は急性相反応時の変動と逆向きであった。すなわち発熱時にはこれら神経部位の活動抑制がおこり,これが急性相反応発現を招来するという可能性が示唆される。
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