研究概要 |
発熱反応の発現機序ならびに生体防御との関連については,いまだに不明の点が多い。近年発熱発現物質についての研究が著しく進み,多数の発熱因子が発見されてきた。そこでこれら発熱諸因子による発熱反応の違い,発熱発現機序,ならびに非特異的生体防御反応の発現状況等を観察することにより,発熱反応のもつ生体防御の全体像を明らかにしようとした。それには細胞過程から個体レベルに至る多面的な研究方法として次の3つの方法により解析を行った。1)Histo in situ hybridization法,2)無麻酔発熱実験,3)電気生理学的実験。この3つの視点に立った研究を平行して進める計画であったが,4年の間に各々の研究進度に遅速が生じ,特に2)の無麻酔発熱実験はさらに下垂体・副腎系活動の変動を追求した研究と,発熱発現機序の究明から当初計画になかった形態学的手法の導入による研究,さらに無麻酔,無拘束動物を使用した研究にまで進展し,著しい進歩を示した。結果的にみて,全研究の重点も自然にここに置いたものとなった。当初大きな期待を持った1)のhybridizationを用いた研究は,これまで教室にはなかった手技を使用するため,その技術習得に長時間を必要とし,さらには2)の研究の進行状況如何によっては,これに対する応援も平行したために,所期の目的の50%以下しか達成できなかった。しかし将来に向けて当教室の研究間口を広めたことは大きな収獲といえよう。これまで通常の手技としてきた電気生理学的方法は,ここでは主として脳スライス実験が利用された。本成績には解釈に自ずと限界があり,2)の研究の進展なしにはその生理学的意義を賦与することは難しかったものと思われる。両面の研究の進展によって新しい解釈がなされ,新しい局面に入れたものと思われる。結論的には,かかる多角的・多面的アプロ-チは個体生理学的立場に立って進める研究に大きく貢献している。
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