研究概要 |
好中球のNADPHオキシダーゼについて以下の新しい知見を得た. 1)NADPHオキシダーゼの精製 ブタ好中球に油滴を食べさせ食胞を調製し,そこに存在するNADPHオキシダーゼをTween20で可溶化後DEAEーセファロース,フェニールセファロースカラムを用いて精製すると,SDSーPAGEでほぼ単一のバンドを形成するまで純化された. しかし,活性が不安定なため活性の回収が著しく低く,今後精製標品の性質を調べるとともに活性の安定化の条件を検討する必要がある. 2)NADPHオキシダーゼのNADPH結合部位の検討 すでにブタ好中球の可溶化したNADPHオキシダーゼのNADPH結合部位については2′,3′ージアルデヒドNADPHを用いてアフィニティラベルし,66K蛋白質に結合することを明らかにしている. 本年度はヒト休止時好中球と慢性肉芽腫症の好中球においてNADPHが結合するかどうかを検討した,その結果,休止時および慢性肉芽腫症の好中球ともにNADPHは66K蛋白質に結合することが明らかとなった. またヒト血液細胞では好中球の他単球がNADPH結合能を有するがリンパ球,血小板,赤血球はもたないこともわかった. 3)チトクロムb_<558>に対するモノクローン抗体の作製 ヒト好中球のチトクロムb_<558>に対するモノクローン抗体(7D5)を作ることに成功した. 本抗体は,可溶化したチトクロムb_<558>に特異的に結合し,ヘモグロビンやミエロペルオキシダーゼ,チトクロムp_<450>とは結合しなかった. 免疫化学的研究により,本抗体は正常好中球とは結合するがリンパ球や赤血球それに慢性肉芽腫症の好中球とは結合しないことが明らかとなった. さらに患者の母親の好中球には結合するものとしないものがあることがわかった. 今後この抗体を用いてチトクロム_<558>とNADPHオキシダーゼ活性との相関についての研究が予定されている.
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