研究概要 |
最近の顕微蛍光測光法の応用が広く行われるよすになった結果, DNAの定量が腫瘍の良性悪性の鑑別, 予後の診断に有力な手がかりを与えるというデータが集積されてきた. しかし, これを人体病理学へ手軽に用いることには障碍があった. その理由は, DNAの顕微蛍光測光を行うためには, 材料ガスメアの形でなければならず, 病理診断に一般的に用いられるパラフィン切片がそのまま使用できないという制限があったからである. 本研究では, 共焦点レーザ螢光顕微鏡の使用により, 切片のままで螢光染色し, トモグラフィをとり, 核が重なったままでも測光できる可能性を追求し, パラフィン切片のまま, 病理組織像の読みと重ねて, その中の核のDNAをひとつひとつ精密に測定する方法を確立することを目的として今年度の研究を行った. まず, 本研究の初めに, レーザ螢光顕微鏡を用し, 共焦点系にセットすると焦点深度が極めて浅くなり, 重なりあった双翅類唾腺巨大染色体が見事に光学的にスライスされ, マイクロトモグラフィーの成功することがわかったこのような研究において非常に重要なのは光学的スライシングの結果, 焦点面におかれたピンホールを通過してくる光量が著しく減小することであり, これを画像処理によって補い, 定量性のあるきれいなイメージを得ることである. 本年度の研究に画像処理専用のヒューレットパッカードHP9000,32ビットコンピュータ825SRXを導入することができたので, 迷光によりノイズをソフトウェアを開発して除去し, 重なった胃粘膜内細胞核に借用して, 実際にマイクロトモグラフをとりながら, 三次元的にデータを集める技術を開発することができた. この目的のために, オリンパス光学の開発チーム(代表者竹田一郎本部長)と大阪大学工部応用物理学教室の南教授のグループの協力が大きな力となった. 今後, トモグラフィーがどのていどの精密な定量性を与えうるか検討を進めて行く予定である.
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