研究課題/領域番号 |
62440037
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鎌田 武信 大阪大学, 医学部, 教授 (80028399)
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研究分担者 |
片山 和宏 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
佐々木 裕 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
笠原 彰紀 大阪大学, 医学部, 助手 (70214286)
林 紀夫 大阪大学, 医学部, 講師 (00144478)
佐藤 信紘 大阪大学, 医学部, 講師 (90028358)
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キーワード | B型肝炎 / HBV / X遺伝子 / 肝癌 / 肝炎進展 / HBx抗原 / HBx抗体 / ウィルス増殖 |
研究概要 |
B型慢性肝疾患肝組織内に於いて、HBウィルス増殖の部位にほぼ一致した部位の肝細胞質内にHBx抗原が発現し、血中HBx抗体の出現とともにHBx抗原の発現が抑制されることは既に明らかとなった。HBウィルスのX遺伝子は、in vitro実験系において、HBウィルス自身のenhancer領域を活性化することが明らかにされており、in vivoにおいてもHBx抗原はHBウィルスの増殖を促進している可能性が示唆される。そこで、肝組織内HBx抗原発現とHBウィルス増殖の指標である血中HBVーDNAとの相関を検討した。HBx抗原陽性陰性別のHBVーDNA陽性率は、HBx抗原陽性例では77.5%(31/40)が陽性であったのに対しHBx陰性例では7.1%(1/14)が陽性で、HBx抗原陽性例でのHBVーDNA陽性率は有意に(p<0.01、χ^2検定)高かった。以上よりHBx抗原は、B型肝疾患に於いてHBウィルス増殖を促進している可能性が強く示唆された。さらに、最近Pre-S抗原がDane粒子の形成に必要であることがin vitroに於て示されており、また同部位にもX遺伝子と同様のin vitroの系においてtransacting活性が示されているため、Pre-S抗原の発現動態とHBウィルス増殖との関連もあわせて検討した。Pre-S抗原は肝細胞質および肝細胞膜上に発現しており、Pre-S抗原が膜上に発現している症例の血中HBVーDNA陽性率(22/26:84.6%)は、Pre-S抗原細胞質発現例のそれに比べ(7/14:50%)有意に(p<0.05、χ^2検定)高く、Pre-S抗原発現動態がin vivoに於いてもHBウィルス増殖を制御している可能性が示唆された。さらに、HBx抗原陽性かつPre-S抗原膜上発現例では、95%(21/22)がHBVーDNA陽性であったのに対し、HBx陰性かつPreーS細胞質発現(膜上陰性)例ではHBVーDNA陽性例は見られず、HBx遺伝子およびPre-S遺伝子の両者はHBウィルス増殖と密接に関与していることが示された。
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