研究概要 |
心筋症における細胞膜情報伝達系の異常を検討しその発症機序を解明するためにまず心筋症ハムスタ-(Bio14.6)における心筋細胞膜βーadrenergic receptorーアデニレ-トサイクレ-ス(AC)系の構成要素である、受容体、促進性GTP結合蛋白(Gs)、抑制性GTP結合蛋白(Gi,O,P)、触媒部位(C)について検討した。心筋症ハムスタ-において、αーadrenergic receptorには大きな変化は見られないが、βーadrenergic receptorαの数が心肥大期から心不全期にかけて減少する傾向にあった。また、生後8週、11週、23週における、cAMPはコントロ-ルでは週令による変化は見られなかったが、心筋症ハムスタ-では週令とともに優位に減少する傾向が見られた。GTP結合タンパク質のうちGsはコントロ-ルともに週令による変化は見られなかった。しかしGiはコントロ-ルにて週令と共に減少傾向が見られたが、心筋症ハムスタ-では変化はなく、カテコ-ルアミンの過剰刺激が、cAMPを介する情報としては細胞内に伝わりずらくなっていると考えられた。一方、Gpはαーadrenergc receptorと関連を持ちさらにPIーPLCを活性化させると考えられているため、心筋症ハムスタ-におけるPLC活性を検討したところ、心筋症ハムスタ-において活性がコントロ-ルよりも高かった。さらに細胞内カルシュウム濃度を調節すると考えられているIP3およびIP4の代謝に関して検討を行ったが心筋症ハムスタ-ではIP3キナ-ゼ活性が亢進しており、週令と共に増加する傾向にあった。IP4を分解するIP4ホスファタ-ゼはコントロ-ルに比して心筋症ハムスタ-では活性が低下していた。すなわち細胞内カルシュウム濃度を調節するイノシト-ルリン酸のうち、心筋症ハムスタ-ではIP4が増加する傾向にあった。
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