研究分担者 |
小室 一成 東京大学, 医学部, 医員
倉林 正彦 東京大学, 医学部, 医員
土持 英嗣 東京大学, 医学部, 助手 (90197715)
磯部 光章 東京大学, 医学部, 助手 (80176263)
山沖 和秀 東京大学, 医学部, 助手 (70182409)
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研究概要 |
本研究は, 遺伝子工学及び細胞工学を導入して, これまでアプローチが困難であったヒトの心筋における病態生理を分子生物学的な観点から解析し, 心筋の肥大と分化の過程を収縮機序の中心的な役割を担い, 収縮エネルギーの変換に直接関与する収縮蛋白のミオシンを指標に, 蛋白分子生理学及び遺伝子レベルから検討を加え, 心筋症を中心とした心疾患の病因, 病態を解明せんとするものである. 第1年度としての本年度の成果は下記の通りであり研究は順調に進展し, 多くの新しい知見が得られた. (1)ヒト心筋においても負荷により肥大が形成されるとともに, ミオシンもエネルギー効率のよいβタイプに変換されることを示したが, われわれはヒト遺伝子ライブラリーより, ミオシン分子のサブユニットの重鎖と軽鎖をencodeするcDNAをクローン化した. そしてその塩基配列を決定すると共に, 各アイソフォームに特異的な配列を示す3′-untranslated(非翻訳領域)のオリゴヌクレオタイドをプローブにmRNAレベルでの変換を検討した. その結果, ヒト心筋組織において, とくに負荷の加わった側の心房組織で負荷のない側と比較して, βタイプの重鎖ないしは軽鎖に特異的なmRNAが著しく増加していることが示された. これは圧負荷という物理的な刺激が心筋細胞内の核に伝達されて, βタイプの重鎖および軽鎖遺伝子における転写回転が促進され, 蛋白レベルにおけるαからβタイプへのミオシンの変換が出現することを示し, 心筋の負荷に対する肥大と分化の過程を明らかにする大きな第1歩をすすめることができた. (2)さらにモノクローナル抗体を用いて, 従来報告のなかった胎児型ミオシンの存在を示したが, その蛋白構造を解析した結果, αともβタイプとも異なった構造を有し, その示すATPase活性は低くβタイプに相当することが明らかとなった. 心筋症におけるその著しい発現は, その病態生理と関連して極めて重要である.
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