研究概要 |
高グリシン血症(非ケトーシス型)は重篤な中枢神経系障害を呈する神経難病の一つであり,グリシン開裂酵素の遺伝的欠損に基づくことが筆者ちにより明ちかにされた疾患である. 本研究では本疾16例について臨床的並びに生化学的檢索を行ない本症の病態病因の究明を行ない以下の知見を得た. 1.本症には新生児型に著明な中枢神経症状を以て発症する新生児型と新生児期には無症状に経過し乳幼児期に徐々に精神運動機能の発達遲延が自立ってくる遲発型に比し髓液グリシン値並びに髓液血漿グリシン比が有意に高いことが見出された. グリシン開裂酵素の分析の結果,両型の違いは肝及び脳における該酵素の欠損の程度に基づくことが明らかにされた. すなわち,新生児型ではグリシン開裂活性は全く檢出されないか著明な低値を示すのに対し,遲発型では若干の残存活性が見出された,さらに該酵素系を構成する1つの成分蛋白の檢索を行なった結果,新生児型では13例中11例がP蛋白の特異的欠損,2例がT蛋白の特異的欠損を示し,遲発型ではT蛋白活性の部分欠損が1例見出された. 新生児型のP蛋白欠損の症例についてP蛋白の抗体を用いて調べた結在CRMは檢電されなかった. 以上の成績はグリシン開裂酵素系の各成分蛋白(少くともP蛋白のT蛋白)は同一遺伝子による支配されていることを示唆するものである. 1.本症には新生児型に著明な中枢神経症状を以て発症する新生児型と新生児期には無症状に経過し乳幼児期に徐々に精神運動機能の発達遲延が目立ってくる遲発型とがあり,新生児型は遲発型に比し髓液グリシン値並びに髓液血漿グリシン比が有意に高いことが見出された. グリシン開裂酵素の分析の結果,両型の違いは肝及び脳における該酵素の欠損の程度に基づくことが明らかにされた. すなわち,新生児型ではグリシン開裂活性は全く檢出されないか著明な低値を示すのに対し,遲発型では若干の残存活性が見出された,さらに該酵素系を構成する4つの成分蛋白の檢索を行なった結果,新生児型では13例中11例がP蛋白の特異的欠損,2例がT蛋白の特異的欠損を示し,遲発型ではT蛋白活性の部分欠損が1例見出された. 新生児型のP蛋白欠損の症例についてP蛋白の抗体を用いて調べた結果CRMは檢出されなかった. 以上の成績はグリシン開裂酵素系の各成分蛋白(少くともP蛋白のT蛋白)は同一遺伝子による支配されていることを示唆するものである. 2.ラット脳においてグリシン開裂酵素活性が脳発達の旺盛な時期に平行して高値を示すこと,さらにヒトの脳においても胎児期及び乳児期は成人期に比し該酵素活性が有意に高いことが見出された,これは脳におけるグリシン開裂酵素の生理的事光を示唆するものである.
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