研究概要 |
活性化リンパ球の指標として単クローン抗体,Kiー67と反応する核抗原を発現した細胞に注目し,ウイルス感染症,マイコプラズマ肺炎など病原体の排除に細胞性免疫の関与の大きい感染症における末梢血Kiー67陽性リンパ球の推移を検討した. これらの疾患においては,例外なくKiー67陽性細胞の急性期における増加が観察されるが,敗血症などの細菌感染症ではこのような現象は観察されなかった. 川崎病,特発性心筋炎では,末梢血におけるKiー67陽性細胞の長期にわたる増加がみられたが,古典的結節性動脈点,エリテマトーデスなどでは増加はみられず,その病因に明らかな差のあることを推察させる. EBウイルス感染の多くは,臨床的に伝染性単核症としてみられ,T8^+異型リンパ球の著増を特徴とし,これらの細胞にはKiー67核抗原の発現がみられる. EBウイルス感染はときに異常経過をとり,リンパ増殖性疾患の原因となることが知られており,その一つにVAHS(Virusーassociated hemophagocytic Syndrome)の存在が知られている. EBウイルス初感染によりVAHS様臨床像をしめした兄妹例におけるリンパ球活性化の動態を末梢血,リンパ節標本について検索し,T8^+細胞の活性化の障害と,これを代償するかにみえるLeuー7^+インムノブラスト様細胞の異常増殖を明らかにした. 患児にみられたLeuー7^+細胞は,T8抗原を欠き,かつ抗CD^3抗体により誘導される細胞障害能を欠くなど,形質,機能の面で正常Leuー7細胞とは異る. 数ヶ月にわたり発熱,皮疹の出没をみ,軽度の肝脾腫を伴うNK細胞増多症(Leuー11^+,Leuー7^-,CD3^-)の乳児例の検討では,Kiー67核抗原の発現はみられず,原因はウイルス感染以外にあると考えられ,白血病か否かについて検討中である.
|