研究概要 |
豚を用いた肝臓移植における摘出肝の長時間保存に関する研究として, 特に拍動型肝灌流法の意義について研究中である. 1.当初計画した実験群, すなわち, I群:摘出直後移植群, II群:単純浸漬保存群, III群:持続灌流保存群, IV群:拍動型灌流保存群のうち, I群は5組を施行し, それらの術後生存日数は, 41日, 40日, 21日, 10日, 6日であった. II群は3組施行し同じく, 4日, 1日, 1日であり, III群は1組施行し同じく1日であった. 各群につき現在, 術後肝機能検査, 病理組織学的検査, 血管内皮細胞の顕微鏡所見等につき, 現在検索中である. また後述のごとく, 犬における同所性肝移植において, 術直後の組織中ATP産生量の多いものは良好な予後が得られたため, 豚においても同様の知見が得られるかを現在検索中である. 2.flow wave form rectifierを装着した拍動型肝灌流装置をクレハ化学工業(株)と試作検討中であったが, 完成し, 灌流中の至適流量, 流圧について検討中である. 63年度から実験IV群の本格実験に入る予定である. 3.雑種成犬を用いた同所性肝臓移植の実験で, 以下の新しい知見を得た. 移植犬の術後生存日数により, A群:早期死亡群(術後3日以内死亡, 6例)とB群:生存群(7日以上生存, 平均12日, 6例)とで, 肝組織中のATP量を経時的に測定した. 肝摘出前のATP量を100%とした各時点でのATP量比は, A, B群各々, 灌流開始後10分;53%, 94%, 血流再開直前;17%, 31%, 移植肝血流再開後10分;46%, 87%, 30分後;40%, 81%であり, どの時点においてもB群において有意に(P<0.05)高く, 組織中ATP量の灌流中での保持, および血流再開後早期のATP再産生量の良好なものが予後と密接に関係しこの組織中ATP量が移植肝のviability判定の指標として有用であるものと考えられた.
|