研究概要 |
本研究の最終目標は患者に出来るだけ侵襲の少い方法で頸部動脈の狭窄ないし閉塞を再開通させ, 脳血管障害を改善させることであるが, 今年度は, 1.血管内視鏡で種々の条件下での血管壁の病変を確実に観察する技術を獲得する, 2.再現性のある狭窄モデルを作製することを研究目標とした. まず, 血管内視鏡での観察は, トリメダイン社製先端部外径2.4mmの, 送水口, 血管閉塞用バルーンを持った前方直視型ファイバースコープを使用した. まず正常の動脈および静脈内腔を観察する事から始め, 更に血栓作製前後の状態の観察にも用いた. 血管内視鏡そのもの, 特にバルーン等にも改善の余地はあるが,問題は観察に際し, 50ml/min以上の大量の生〓食塩水を血管内に送入し血液を除去する必要があることである. 今後これを頚部動脈に応用する際, この送水量を如何に減すかを更に検討する必要がある. 次に, 狭窄モデルの作製は血管内皮を損傷し,壁在血栓を作製することを試みたが, 血栓は形成されない. 現在は, 主に腹部大動脈から両側腸骨動脈にかけて生体内で閉鎖システムのモデルとし, その一部に血管内皮の損傷を作り, 更に送血ポンプでシステム内の血流を保つことにより, 高率に壁在血栓を作製するのに成功している. このモデルでは同時に経時的に血栓形成の過程を血管内視鏡により観察しているが, ポンプによる血流再開後約30分より50%前後の狭窄が形成され, 時間の経過とともに血栓は増大して来る. 現時点では, 血栓形成の過程の観察と更に血栓溶解剤による血栓溶解の過程を観察する急性実験を行っているが, この実験の臨床的意義は大きい. 今後は, 1.形成された血栓を基貭化させ慢性実験のモデルを作る, 2.同様のモデルと頚部動脈に作る, 3.レーザー照射により起る血管壁の病理組織学的変化の検討, 4.レーザー照射による基貭化血栓の蒸化とその病理組織学的検討へと進む予定である.
|