研究概要 |
DNA合成を行なっている腫瘍細胞を抗BudR抗体を使用した免疫染色で識別することにより, 脳腫瘍の臨床例とラット実験脳腫瘍の成長動態を研究した. ラットグリオーマ細胞(RG12)をラット(Fischer)の脳内に注入するとほぼ100%の確率でグリオーマが増殖する. この担脳腫瘍ラットにBudRを静注し, 1時間後脳を冷70%エタノールで灌流固定した. DNAを合成している腫瘍細胞内にとりかこまれているBudRを抗BudR抗体にて免疫染色すると, labeling index(LI)が算定できる. 腫瘍の大きが1.5〜2mm程度までの小腫瘍でのLIは約25%で腫瘍の中心部と辺縁部との差は殆どない. しかし, 腫瘍が増大して3mm以上になると中心部は15%程度であるのに比して辺縁部は30%を示し, 部位によって大きな差異が認められた. また, この差はBudRを使用したLIばかりでなく, フローサイトメトリーによるDNA量の計測でもやはりS期は辺縁部で高く, 中心部に低い傾向を示した. この腫瘍に放射線を1000ー3000rad照射するとLIはすぐに下りはじめ, 照射後24hr後には照射前のLIの半分の値を示すようになり, その後徐々に回復する傾向を示した. このLIの部位による変化は局所脳血流量や脳代謝率の測定で認められた部位による変化と矛盾しないように思われた. 一方, ヒトの脳腫瘍においてはその組織学的悪性度とLIとの関係をみてみた. 原発性脳腫瘍では転移性脳腫瘍ほどにはLIは高くなかったが, グリオーマについてみると悪性なもの程, 高くなる傾向が認められた. すなわち多型性神経膠芽腫では5〜10%, 良性細胞腫では0ー2%であった.
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