研究概要 |
同種複合組織移植の基礎的研究を目的として近交系ラットを用いた肢移植モデルを確立し昭和62年度では下記の実験成果が得られた. 1, シクロスポリン(CN)を用いたラットの同種肢移植 予備実験としてF344ラットを用いた自家及び同系移植を合計40例以上行い技術的に習熟した時点で実験群を作成した. (実験群)BNの後肢をF344へ同所性に移植するmajor mismatch群およびLewからF344に移植するminor mismatch群の2群を作製した. 免疫抑制剤としてCS25mg/kg/dayを投与し投与期間により短期,長期,非投与群に分け肉眼的,組織学的,免疫学的,電気生理学的解析を行った. (結果)皮膚の拒絶に関してはmajor mismatchのCS非投与群(対照群)では11日前後に対しCS短期投与では49日,長期投与では60日前後であった. 一方major mismatchではCS投与により短期,長期とも約1年以上の生着が得られた. 皮膚を除いた組織(筋肉,骨,関節軟骨等)ではCSの投与によりminor mismatch及びmajor mismatch群とも組織学的,免疫学的にも完全な生着が得られた. 電気生理学的解析ではCSに投与によりminor及びmajor mismatch群とも皮膚感覚は移植後約3ヵ月より回復し, また移植筋の誘発電位も確認された. 2, FK506(FK)を用いたラットの同種肢移植ー短期投与による影響ー (実験群)BNからF344へのmajor mismatch群を作製し, 免疫抑制剤としてFKを短期間投与した. (結果)移植肢の皮膚の拒絶についてのみ検討したところFK短期投与により投与量依存性に生着期間は延長し1mg/kg/day投与では100日前後にまで生着期間は延長した.
|