研究概要 |
両側総頚動脈閉塞と脱血による低血圧(平均動脈圧50mmHg)を併用したラットの脳虚血モデルは確立した. 虚血前および虚血中の背景麻酔が, 虚血による細胞障害の程度に影響することが予想されたため, 笑気・ハロセン・イソフルレン麻酔下に15分間の脳虚血を行い,虚血後1時間の局所脳ブドウ糖消費量と局所脳血流量をそれぞれ^<14>Cーdeoxyglucose法と^<14>Cーiodoantipyrine法により測定し, 麻酔薬単独時(虚血侵襲なし)と比較検討した. その結果, 麻酔薬単独時と比較して, 虚血後の局所脳ブドウ糖消費量および血流量は, イソフルレン麻酔時もっともよく温存され, 笑気麻酔時には著明に低下し, ハロセンは両麻酔薬の中間であった. このことから, 背景麻酔により虚血侵襲の程度が異なることが示唆された. 笑気麻酔下10分間の脳虚血を行い, 虚血後1週間の組織学的変化をcresyl violet染色により調べ, 海馬CAlが比較的特異的に障害されていることを確認した. 同様のモデルで, 虚血後の行動量をopen field testにより測定した結果, 虚血後24時間内は行動量低下が顕著であった. 15分間の虚血後, 脳局所におけるカルシウムの蓄積を^<45>Caを用いて調べた結果, 虚血後1時間までは, 明らかなカルシウム蓄積は認められなかった. 以上の如く, 脳虚血の病態を多角的に解明するために, 虚血後の組織学的・神経学的所見と局所脳代謝・血流およびカルシウム蓄積について調べた. 今後は, 同様のモデルを用いて, カルシウム拮抗薬の治療効果を検討していく予定である.
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