研究概要 |
亀田らは本課題に着手する以前から,音声言語の聴取と大脳機能の左右差について研究を行なってきた.本課題による研究ではその脳電位分布への反映を確認しようとするものである.また亀田およびその共同研究者の鎌田は,動物について大脳皮質の電気的活動については諸種の研究を行ない発表してきているが, ヒトの脳波については経験が少なかった.さらに脳電位分布は電算機プログラムによって行なわれ, そのプログラムは医用電算機ATACー450に搭載して実施されるものであるが,ATACー450そのものはほとんど連日使用しているので十分使いこなせるものの, 本プログラムは著作使用権保護のためユーザがこれを読みとることができないように保護されているので, 経験が必ずしも役立たない.従って脳波〓鎌装置およびその分析プログラムが導入されてから,その習熟のためにかなりの時間が費やされた. 安定した記録と分析が行ないうるようになったので実験が開始された. 音声行動(発声および聴取)に伴なう脳電位分布が比較され, 左脳の優位が認められる点で, われわれの予測および他の研究者の結果と一致した.さらに進んで言語音および擬似言語音の比較が行なわれ, どの程度類似すれば左脳慮位を示すかの実験が行なわれている.これはいかなる音響的性質が言語に特有と認知されるかについての客観的研究へ発展できる.しかし発声と発音擬似運動との差は安定した成績を得ていない.これは指示が言語的になされ,中枢制御が内言語的になされているためと思われ, 言語活動を伴なわない発音擬似運動を考え出す必要がある.
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