研究概要 |
1.大腸菌由来Lipopolysaccharide(LPS)貼付による, 急性炎症を起こさせたラット上顎切歯歯髓のアラキドン酸代謝能の変動を経時的に調ベ, 正常歯髓のそれと比較検討した. 正常歯髓のアラキドン酸代謝物は;12ーHETE>6ーケトーPGF_<1α>>PGE_2,TXB_2,HHTの順で生成された. これに対し,LPSを貼付するとアラキドン酸代謝活性は1〜10倍にも上昇した. その変動を経時的に調ベると1時間後のHETE産生の増加,12時間後に6ーケトーDGF_<1α>産生能が4倍に上昇し, 24時間後には, PGE_2およびTXB_2産生能が10倍近くに上昇した. この他11ーHETEに産生も大きな増加を示し, 歯髓炎の発症にアラキドン酸代謝の顕著の亢進の関与があることが判明した. 2.慢性辺緑性歯周炎患者の病巣部および末梢好中球をFicoll/Rを用いて分離したのち, そのアラキドン酸代謝能を正常人のそれと比較検討した. その結果, 若年性歯周炎患者および急速進行性歯周炎患者では. 15ーHETE産生能が対照群の約半分に低下していた. 15ーHETEは, 炎症の進展に重要な役割をもっと考えられている5ーリポキシゲナーゼを抑制することが知られている. したがって, 上記の結果は, 歯周炎患者の好中球は, 5ーHETEの合成低下が5ーリポキシゲナーゼの活性化, ひいては炎症の亢進現象をひき起こしている可能性が暗示された.
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