難活性口腔粘膜疾患の免疫学的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62440076
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 藤林 孝司 東京医科歯科大学, 歯学部, 講師 (80013978)
• 研究分担者: 杉山 芳樹 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (00162909) ; 高橋 雄三 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (50014329)
• キーワード: シェ-グレン症候群 / 口腔粘膜癌 / TIL / IL2 / LAK / 白板症 / 前癌病変 / SCC抗原

研究概要

シェ-グレン症候群および口腔乾燥症患者に対し、Lーシテインエチル塩酸塩を臨床使用した。症状別改善頻度ではシェ-グレン群に比べ、口腔乾燥症群で良好な成績を示した。投与前後で比較すると、混合唾液分泌量は平均9.53mlから10.77mlへと有意の増加がみられ、また投与前後の唾液腺シンチグラフィ-を比較した著効例2例では明らかなシンチ結果の改善があり、timeーactivity curveの上からも最大蓄積率、最大分泌率の増加が確認された。免疫血清学的検査の結果では投与前後で有意な変化はほとんど示さなかったが、血中の唾液由来アミラ-ゼの比率が投与後に比し、投与後では11例中10例で低下を示した。
口腔粘膜癌症例において腫瘍局所浸潤リンパ球(TIL)と末梢血リンパ球(PBL)をインタ-ロイキン2(ILー2)と共に培養すると、TILはPBLに比較してILー2での長期培養により高いNKおよびLAK活性を維持し、細胞増殖率もPBLを上回る症例が認められた。また症例によっては凍結自己新鮮腫瘍細胞に対するキラ-活性を示した。さらにILー2を治療のため腫瘍局所に局注した症例からの分離されたTILが高いNK活性やLAK活性を示す症例もあり、この例では臨床的腫瘍縮小効果も認められた。
扁平苔癬、白板症、乳頭腫その他各種の口腔粘膜の前癌病変ならびに口腔粘膜癌症例の血清中の扁平上皮癌関連抗原であるSCC抗原量を測定したが、各種前癌病変10例では陽性例はなく、口腔扁平上皮癌症例でもstageI、II、III、IVでの陽性率は各々0%、5%、38%、83%であり、したがって口腔扁平上皮癌の早期診断の目的では血清中SCC抗原量の測定は有用とはいえなかった。ABC法による組織切片上のSCC抗原の染色同定では、高分化型扁平上皮癌では強く陽性であり、低分化型では染色性は弱かった。白板症等の前癌病変部では有棘細胞層や錯角化層が陽性で、これは正常口腔粘膜上皮でも同様であり、悪性変化を同定する特異性は無い。

研究成果

• [文献書誌] 藤林孝司: "シェ-グレン病および口腔乾燥症に対する薬物療法Lーシステインエチル塩酸塩による検討" 日本口腔外科学会雑誌. 35. 2420-2438 (1989)
• [文献書誌] 藤林孝司: "歯科、口腔疾患の免疫学的研究の展望と口腔癌免疫療法の最近の進歩" 歯界展望. 74. 1181-1197 (1989)
• [文献書誌] Takashi Fujibayashi: "Immunological consideration on oral malignant and premalignant lesions." An Overview of Current Problems for Oral Cancer“International Congress Oral Cancer". (1990)
• [文献書誌] 藤林孝司: "加齢と生体防御免疫機構" Dental Diamond. 15(3). 17-23 (1990)
• [文献書誌] 高橋雄三: "口腔癌患者に対する抗CD3/ILー2活性化末梢血リンパ球による養子免疫療法" 日本口腔科学会雑誌. 38. 1285-1285 (1989)
• [文献書誌] 森良之: "腫瘍組織浸潤リンパ球(TIL)からのnIL2による細胞障害活性の誘導" Biotherapy. 3. 80-84 (1989)
• [文献書誌] 藤林孝司(小椋秀亮,小倉保已編集): "現代歯科薬理学 第2版" 医歯薬出版, 627 (1989)
• [文献書誌] 藤林孝司(塩田重利,原耕二,渕端孟編集): "歯科臨床検査事典 第1版" クインテッセンス出版, 977 (1990)