研究概要 |
1981年から1988年まで8年間の当科における口腔粘膜疾患の臨床統計的研究の結果は,症例数は1882例であり,疾患別分類では口腔扁平苔癬が17.1%,ベ-チェット病を含めた再発性アフタ14.3%,口腔白板症11.7%,シェ-グレン症候群を含む口腔乾燥症7.4%などが多い疾患であった。口腔扁平苔癬で難治性のタイプは発赤を主微とするびらん型に多く認められる。今回の322例の中で初診時扁平苔癬あったものが,約2年の臨床経過の後に扁平上皮癌が発生した症例が1例あり,悪性化率は0.31%であった。 口腔乾燥症は140例あり,そのうち51例がシェ-グレン症候群であった。厚生省診断基準の確実例は33例あり,21例(63.6%)が口唇腺生検の病理組織像で,25例(75.8%)が耳下腺造影で確実例の診断基準を満たしていた。診断の補助的な簡便法としてガムテストが有用であり,非侵襲的方法で唾液腺シンチグラムは画像診断として優秀であり,唾液分泌機能検査法としても極めて有用であった。免疫血清学的検査所見から,各種自己抗体の出現や血清アミラ-ゼの低下,アミラ-ゼアイソザイムの変化などは口腔乾燥症からシェ-グレン症候群への移行を予知し,あるいはその可能性を示唆する一つの所見と考えられる。 口腔粘膜癌症例について,自己リンパ球に抗CD3抗体とILー2を添加してキラ-活性を有するリンパ球(LAK細胞)を試験管内で培養して誘導し,これを生体に移入して行う養子免疫療法の諸条件について検索した。培養液ならびに培養バックの違いによってはLAK細胞の増殖パタ-ンおよびキラ-活性には殆んど差異は見られなかった。培養前に各種放射線量を照射すると,増殖反応は制限されたがキラ-活性は影響を受けなかった。生体内移入後の細胞の動きを検索し,始めに肺に集積し次いで肝臓,脾臓へと移動することが明らかとなった。
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