研究概要 |
本年度の研究実績は以下のごとく要約される. ヒト骨細胞は口腔外科手術により得られたヒト骨組織をコラーゲンゲル内包埋法により分離培養し, 継代培養を行った. その結果, 形態的には線維芽細胞様や多角状を示す細胞が得られた. これら細胞の性質をアルカリホスファターゼ活性, 増殖能, 石炭化能, PTHに対する反応性につて検討を加え, ヒト骨芽細胞様細胞であることを確認した. さらに, 本細胞について長期継代培養を試み, 現在, 継代累数で45回の継代数に達している. 本培養細胞は形態的にヘテロであったので, 本細胞系のクローニングを限界希釈法にて試み, 15のクローンを得た. 形態的に安定な多角形および線維芽細胞様を示す細胞クローンについて, 現在その特性に検討を加えている. 骨吸収因子の解析は, 種々の樹立細胞株の骨吸収活性を検討し, 舌扁平上皮癌由来樹立細胞株の培養上清に有意に高い活性を認めた. 既に, 本活性物質が蛋白質性因子であることを示唆する結果を得ている. 現在, 本因子の精製を等電点電気泳動法, 高速液体クロマトグラフィーを用いたゲル濾過法等で実施中である. さらに, ヒト骨細胞より骨吸収阻害因子の分泌を示唆する結果を得たので, 本阻害因子の検討を予定している. 骨形成因子に関しては, 骨の組織培養法を用いた骨形成のアッセイ系の確立に努めている. 培養軟骨細胞由来の骨形成因子活性の検討は, 軟骨細胞の分化と増殖についてレチノイン酸を用いて, cAMPを中心に検討し, レチノイン酸により軟骨細胞が脱分化することを追試, 確認した. 一方, 骨の発育, 成長に及ぼすカルシウム濃度の影響を検討するため, 低カルシウム飼料飼育にてラットを低カルシウム状態とした結果, 体重と血清カルシウム量の低下がみられた. また, 下顎頭関節軟骨の組織学的変化として, 軟骨細胞層のうち肥大層の割合が増加していることを確認した. 現在, その微細構造を電顕的に検討している.
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