研究概要 |
1.大量精製法の改良:ヒトフォンビルブラント因子(VWF)の従来の精製法に検討を加え, 抗体カラムを用いた迅速かつ高収量の精製法を確立した. 2.糖鎖構造の決定:全アミノ酸配列決定の結果, ヒトVWFにはサブコニット当り12個のアスパラギン結合糖鎖と10個のトレオニン/セリン結合糖鎖の存在することが判明した. 本年度はヒトVWFをヒドラジンで分解してアスパラギン糖鎖を遊離させ, 3Hで標識したのち, レクチンカラム, エキソゴリコシダーゼ, ゲル濾過法などを用いて解析した. その結果, 既に報告されている2本鎖, 4本鎖複合型糖鎖の他に, 新たに3本鎖複合型糖鎖, 混成型糖鎖, bisectーGlcNAcを持つ糖鎖などが見つかり, かなり複雑なミクロヘテロゲナイティーの存在することが明らかになった. 3.機能ドメインの同定:VWF血小板膜糖タンパク質(GP)Ib, 同IIb/IIIa,コラーゲン, ヘパリン, 血液凝固第VIII因子などと結合する多機能タンパク質である. 本年度はトリプシンによる限定分解が得られ, GPIbおよびコラーゲンとの結合部位を含むことが明らかにされた52/48kDaフラグメント(残量449ー728)がさらに強いヘパリン結合能を持つこと, 又同じくトリプシンにより限定分解で得られる30kDaフラグメント(残基1ー272)に血液凝固第VIII因子との結合部位の存在することを明らかにした. 4.ジスルヒド結合の決定:2050残基から構成されるVWFサブユニットは169残基の半シスチンを含み, それらは全てサブユニット内ないしサブユニット間ジスルヒド結合に関与している. 本年度はそれらジスルヒド結合位置の約半数を決定し, 3次構造に関する有益な知見を得た. 5.今後の課題:上記3.の知見に基づき, VWFの各種機能ドメインをcDNA発現ベクターを用いて大腸菌あるいは動物細胞で発現させ, それらの生理活性を解析する.
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