研究概要 |
(1) 初期胚神経系の突然変異の能率的なスクリーニング法の開発. ショウジョウバエ神経細胞等を特異的に染めだすモノクローン抗体を多数分離し, また群大の藤田助教授などから供与をうけた. これらを用いて, ホールマウント初期胚の神経系と可視化し, その形態異常変異と容易に同定するスクリーニング系を開発した. (2) 神経系の分化や形態形成に異常を示す突然変異の分離. アルキル化剤EMSを用いて, 第2染色体連関致死変異系統約800を確立した. そのうち致死期が胚発生途上にあるものを選別したところ, 約400系統が残った. それらを一系統ずつ上述の方法で観察して, 胚神経系が梯子状となる時期になんらかの形態異常を示すものをスクリーニングして, 100系統を同定した. それらについて, 染色体地図(座位)の決定を行った. (3) 単一胚初代培養細胞系におけるニューロン分化解析法の開発. これらのニューロン分化異常を示す突然変異をさらに詳しく解析するため, 襄胚期の突然変異の単一胚の細胞を分離し, 試験管内で初代培養した. 正常胚では安定に, ニューロン・筋細胞・脂肪細胞・成虫原基細胞などの細胞分化がおこる条件を工夫した. その条件下で変異胚を調べたところ, ニューロン分化は正常におこるが軸索形成がおこらないもの, ニューロンは軸素も含めて正常に分化するが, 筋細胞の分化がみられぬもの, など, 試験管内でも突然変異の症状を詳しく解析できることを明らかにした. なおこれらの成果の一部は, 1987年10月に米国コールドスプリングバーバー研究所で開かれた「ショウジョウバエの神経遺伝学」シンポジウムで発表した.
|