研究概要 |
自然言語の論理的構造の解明が本研究の主な目的であるが, 62年度においては, レスニュウスキー存在論が自然言語の基礎となる論理であるという前提の下に, レスニュウスキー存在論の拡張を行った. 具体的にいうと, 従来のレスニュウスキー存在論に欠けていた抽象を講成するという演算をレスニュウスキー存在論につけ加え, レスニュウスキー存在論の拡張を試みた. 論理学史上よく知られていることであるが, 抽象という演算をつけ加える場合には, 何らかの制限を課さないと矛盾を惹き起す恐れがある. したがって, われわれの場合においても, 抽象演算にある種の制限が課せられ, 矛盾が生じないようにされている. 抽象が認められると, このように拡張されたレスニュウスキー存在論に基いてモンタギュー文法,すなわち論理文法を展開することは, それほど難かしいことではない. 実際, 本研究においても, モンタギューの論理文法の対象となった英語の断片と概ね一致する英語の部分系がこの研究で提唱されたレスニュウスキー存在論で取り扱えることが示された. 一方, 自然言語の構文解析の問題も, コンピュータ・サイエンスの立場から取り上げられ, 英語の断片に対してプロローグとは異なるパージングが提唱され, すでに電算機にインプリメントされている. この研究とさきの研究の間には, まだ十分な関連が見出されていないが, 次年度においては, 論理型を介して, 両者の関係をつける予定である. なお, 独墺学派に関する研究については, 資料の収集が行われた.
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