研究課題/領域番号 |
62450003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
片野 達郎 東北大学, 教養部, 教授 (70005742)
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研究分担者 |
山田 勝芳 東北大学, 教養部, 教授 (20002553)
阿部 兼也 東北大学, 教養部, 教授 (40005773)
佐藤 武義 東北大学, 教養部, 教授 (80006428)
小川 陽一 東北大学, 教養部, 教授 (30007356)
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キーワード | 正統意識 / 異端思想 / 伝統 / 儒学 |
研究概要 |
本年度は前年度に引き続き不足する資料の調査収集を行うとともに、日常的情報交換とは別個に、研究メンバー全体による研究会を2回開催した。各分担者は研究会での討議等を参考にしながら各々の個別研究を一層深めた。以下はその大要を記す。 本研究の意図は、東アジア世界(日本・中国・朝鮮)において正統と異端を区分する基準が何であったのかを探究する点にあった。日本の場合、正統性の根源とされてきたものは、古代以来、天皇ないしは天皇を中心とする朝廷であったとされている。実際、天皇は武家政治の登場後も超俗的な正統性の頂点的機能をはたしてきた。武士政権の将軍や関白職は、天皇を頂点とする律令制約官職体系の内部に包摂されていた。こうした政治的分野のほか、文芸、言語などの領域においても究極的には天皇・朝廷・都(みやこ)に収劔するような価値体系を有していた。具体的には雅(みやび)としての歌人世界における正統意識や、古語の世界における都鄙感覚などが検討された。しかし、天皇を中心とした価値体系が列島内を普遍的におおいつくしていたわけではなかった。その点を中世奥羽の有力者による地域認識や近世民衆の意識動向から明らかにした。 一方、中国や朝鮮においては、「天」がすべての価値の根源であった。天子・皇帝は「点」に意志の代行者であり、思想・宗教・文芸などの一切の教儀づけた儒学が国家教学となる過程、儒学が国家制度に与えた規定性、儒学内部における正統性の争い、あるいは中国小説に現れた正統性観念、また李氏朝鮮における正統意識を仏教と朱子学との対立という側面から検討し、中国的世界における正統性観念を広領域的に明らかにした。
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