研究分担者 |
F ペレス 上智大学, 文学部, 教授 (30053466)
渡部 菊郎 上智大学, 文学部, 講師 (30191810)
門脇 佳吉 上智大学, 文学部, 教授 (30053490)
K リーゼンフーバー 上智大学, 文学部, 教授 (60053633)
橋口 倫介 上智大学, 文学部, 教授 (80053453)
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研究概要 |
この研究は, 一年間の研究として申請したものであるが, 二年間にわたるものとして補助金が交付されることになったため, 当初の計画を多少修正することとなった. まず, 今年度は, 中世末期, 中世と近世との連続・非連続といった問題にまでは研究を進めず, 専らカロリング・ルネサンスから13世紀までの倫理学の基礎付けについての研究を行ってきた. それにより, 9世紀から12世紀までに共通して見られる, 古代末期・教父時代の思想の創造的な受容では特に中世前期におけるアウグスティヌス思想の発展史をくわしく解明することができた. 倫理学はまずカロリング・ルネサンスのスコトゥス・エリウゲナにおいて, アウグスティヌス的人間論と新プラトン主義・ギリシア教父の存在論の三者が総合されたことにより, 特に形而上学的神学の面から裏付けられたのであるが, この体系は, その想弁的な性格のゆえに, 12世紀までは余り受容されなかった. また, アウグスティヌスの精神論は, 11世紀のカンタベリのアンセルムスの倫理学を基礎付け, 正しさと正義という理念のもとで, 人間の自由の諸段階を倫理的善への肯定としても理解することにより, 倫理学を超越論的に基礎付けたのである. 12世紀ルネサンスの思想は, 倫理学の理論的解明を中心的な課題とし, その問題を主に3つの側面から追求した. すなわち, クレルヴォーのベルナルドゥスに代表される修道院神学では, 倫理は人間の宗教的発展の内に, その一段階として組み込まれ, 恩寵論や救済論とも結びついた, 自由と愛の関係を要とするものである. それに対し, 主に司教座聖堂付属学校で育まれた初期スコラ思想では, 倫理的行為の諸要素の分析に努め, 自由選択能力を理性と意志の相互作用から理解し, シャルトル学派などでき, 主に魂論と感覚論を吟味した.
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