研究分担者 |
野家 啓一 東北大学, 文学部, 助教授 (40103220)
森 雅彦 宮城学院女子大学, 助教授 (90137612)
吉田 忠 東北大学, 文学部, 教授 (60004058)
坂口 ふみ 東北大学, 教養部, 教授 (40012489)
岩田 靖夫 東北大学, 文学部, 教授 (30000574)
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研究概要 |
芸術にあらわれた「宇宙論」の史的研究は本年, 「宇宙論」そのものの史的研究から行われた. 古代エジプト,メソポタミアからギリシャ,ローマのそれは各々の風土的な環境に密着しているといってよいが,ギリシャにおいて「ロゴス」の探究により,プラトンの『ティマイオス』のような後々に多大な影響を与える「宇宙論」が生れたことは重要である. プトレマイオスが古代宇宙論の完成者といわれるが, 芸術においてはプラトンの方がより影響力が強かった. アラビアの「宇宙論」はプトレマイオスの理論の修正を行い13,4世紀に西欧の新しい動きに大きな刺激となった. キリスト教的な意味合いでは「旧約聖書」の「天地創造」説が,西欧の人々を支配したといってよいが,「神」が何もない無から宇宙を創り上げたという考えは, 創造に先立つ物質の存在を述べる古代ギリシャからのアトム論者と対立することになる. しかしこの「天地創造」説はキリスト教美術において一つの大きな主題となり,15,6世紀の美術に数多く表現されることになる. 芸術においては「科学」的な考察は消化されにくく,「宗教」的な主題にすることが重点的に行われる. しかしこうしたキリスト教的「宇宙観」がコペルニクス,ガリレオをはじめとして17,8世紀以後否定されていく中でも,全体的な公理の大枠を完全に否定したのはニュートン公理を批判したアインシュタインまで待たなければならない. この「相対性原理」は,芸術から「宇宙論」を放逐した結果となり,「芸術」が「科学」と分離する近代の傾向を一層助長した. 今年はこのような大きな「宇宙論」の流れを基礎にしながら芸術作品を概括的に見るよう心がけたが,各担当者は各々の専門から個々の作品の「宇宙観」を検討することは二年目の課題として残された. 研究代表者はすでにミケランジェロのシスティナ礼拝堂やレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」の「宇宙観」について発表している.
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