中国陶磁と日本陶磁の比較をまず、基礎資料収集から始めて二年たち、最終年度としては、技術史を基礎に様式の対比を試みた。日本の陶磁史は二本柱からなり、ひとつは赤焼土器、今ひとつは施釉陶磁である。中国陶磁との対比の中で意義を持つのは、施釉陶磁であり、施釉陶磁は日本民族の創造力では開発しえず、結局外来技術導入によって革新し、今日にいたる。その間、中国陶磁の持った役割は絶大であり、唐三彩、宋代白磁・青磁・黒磁・明代染付・色絵磁器が日本陶磁の技術革新の母体となった。 しかし、中国陶磁に従わない独創的な焼物のはその間に介在する。例えば、弥生土器、平安時代の焼き締め陶、桃山時代の茶陶などはいずれも中国に技術革新を求めず、日本人自らが作り得た焼物で、弥生土器や桃山の茶陶は世界最良の作風となっている。こうした日本人の創造性の二重構造を陶磁器を通して明らかにした。
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