研究課題/領域番号 |
62450016
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
辻 敬一郎 名古屋大学, 文学部, 教授 (20023591)
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研究分担者 |
石井 澄 名古屋大学, 文学部, 助手 (70092989)
木田 光郎 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教授 (80023654)
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キーワード | ドメスティケーション / 初期行動 / 生殖行動 / 食虫目 / ジャコウネズミ(またはスンクス) / 攻撃 |
研究概要 |
本研究は、ジャコウネズミ(Suncus murinus,食虫目トガリネズミ科ジネズミ亜科ジャコウネズミ属)の野生個体を起源とするドメスティケーションを進め、その行動特性の経代的変化を追跡するものである。この種の試みは、適切な動物種の選定、多大の作業時間と労力、関連分野との協力関係など、必要な条件が充足されて初めて可能となるものであり、国の内外を問わず他に類例がきわめて少ない。しかし、行動的適応の種内変異の発生を解明するうえに重要なものである。 われわれは、今年度に第9回の発生個体の捕獲・導入をおこない、前年度導入分と併せて維持・繁殖に努めた。しかし、依然として繁殖成績が上がらず、初期世代の充分なサンプルを確保できなかった。そのような事情により、ドメスティケーションの効果については、引続きサンプルを加えて検討していくこととし、今回はその所見の報告は断念した。ただ、分布範囲が縮小してはいるものの、環境変化による生息数の減少は憂慮されたほどには進行していないことが判明し、今後の作業の継続に見通しが得られた。多良間産の個体の場合、とりわけ繁殖が困難だとされているので、飼育環境の再評価や繁殖方式の改善を試み、その障壁を打破することに努めたい。 このように当初計画に対する進行の遅れが生じた反面、長期にわたるドメスティケーションを経た段階の個体(いわゆるスンクス)について今年度とくに、生殖行動の観測を重点的におこない、雄の求愛から交尾に至る過程、および交尾成立直後に一過的に発現する雄の攻撃(post-ejaculatory aggression)の行動継起を記述するとともに、交尾の成否や攻撃の強さを規定する要因についても解析して、新たな所見を得ることができた。この成果は、国際会議や国内学会において発表するとともに雑誌論文として投稿した。
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