研究概要 |
1.日本国内だけでなく, スイス,ドイツ,イタリア,アメリカ,韓国,オーストリアなど世界各国から箱庭療法に関する資料や文献を収集してきている. また国際箱庭療法学会が10月に日本で開催されたのを機に, 各国の学会員と積極的に意見の交換がなされた. そしてこの国際学会において, 特に箱庭療法の妥当性とその国際比較について討議された. 2.これらの成果をもとに, 予備調査として貭問紙を作成し,国際箱庭療法学会員と日本箱庭療法学会員に実施した. その結果, 以下のような知見が得られた. (1).箱庭療法が特に有効なクライエントとしては,一般に子供が考えられるが,大人でも感情・直観タイプの人や,内的イメージの豊かな人が考えられる. (2)箱庭療法を避けた方がよいクライエントとして,自我が弱く現実感の乏しい分裂病やボーダーラインの患者を, 挙げる回答者が多かった. (3).診断に役立つかどうかは意見が分かれた. (4)箱庭についてどの程度クライエントと話しあうかについては, ほとんどの回答者が,面接中は必要最少限にしか話しあわないと答えた. (5).心理療法における箱庭療法の位置付けとして,回答者の意見をまとめると, セラピストとクライエントの関係が大切であり, 箱庭療法だけが浮き上がったものになってはいけないという点が確認された. そして夢分析や絵画療法と同様, 心理療法において無意識を知り, 自己治癒や自己実現のための有効な手段であると考えられる. (6).国際比較については, 個人の特殊性とともに, 文化の影響がどの程度作用しているのか意見がわかれた. そして各国ともセラピストの技量が向上するにつれ, 箱庭療法のプロセスでは文化的差異がなくなってきたのではないかという意見が多くだされた. 日本の特色としては, 単純で直接的表現を示すものが素材として選ばれる傾向があるのではという指摘がなされた.
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