研究課題
1.前年度に収集した各国からの箱庭療法に関する資料をもとに、さらに討論を重ね各国の研究者から情報を収集してきた。また1988年8月にはロンドンで開催された第七回国際箱庭療法学会に河合、山中が参加したのを機に、再度、スイス、ドイツ、イタリア、アメリカ、韓国、オーストリアなどの研究者と直接に意見交換を行ない、箱庭療法実践上の文化比較の問題が討議された。2.前年度の質間紙調査を続行し、上記の成果と総合してみた結果、以下のような知見が得られた。(1)、箱庭療法の適用年令は、基本的に言語化能力の低い児童が中心ではあるが、広く3才〜70才くらいまでの実践例が認められ、年令の幅は広く、その性格類型として感情、直観タイプの者が多いと考られる。(2)、箱庭療法に合わない、もしくは行うべきでないクライエントとして、自我機能の弱いボーダーラインや分烈病の患者があげられ、また、治療者ー患者関係の特徴によって治療者が言語化をし知性化してしまいやすい状況に入りやすい時、箱庭療法が新たな展開をもたらすきっかけとなることが多いことが確認された。(3)、箱庭作品をみる視点として、(a)全体的印象(b)全体的な配置(c)置かれたものの象徴的意義(d)系列的に作品の流れをとらえる(e)作品のテーマ、という5点に分けてみることができる。(4)各国の研究者は共通して、箱庭療法実践中に作品についてのライエントとあまり言語化して話しすぎないようにしている。(5)一方で、アメリカやスイスの研究者には一回の作品に関する象徴解釈に重点が置かれすぎており、日本の研究者は作品の流れに焦点をあて一回一回の作品に解釈を行なわない、という違いがみられた。(6)心理療法では修業が大きな問題であり、その経験の差によって、初心者ほど文差が影響されやすく、熟練する程、文化差がなくなっていくという現象が箱庭療法施行においてもみられた。